目指すは
“人に寄り添う金融”

日銀がマイナス金利政策を解除し、17年ぶりの利上げに踏み切るなど「金利ある世界」への歩みを本格化する日本。
この政策転換により逆風が予想されるのが消費者金融業界だ。
そんな中、個人向けローン「レイク」ブランドを擁する新生フィナンシャルは業界の常識を打破する「365日間無利息」という新サービスをリリースした。
変革を期す同ブランドの狙いを、新生フィナンシャル 執行役員の和泉隆則氏に聞いた。
「スキマバイト」も競合に
付加価値向上急務
日銀の利上げは大きなインパクトをもたらしました。というのも、消費者金融は法律で貸付の上限金利が定められているため、調達金利の上昇分を貸付レートに転嫁できない仕組みになっています。金利が上がれば相対的に利益が減少するシビアな局面に立たされています。
また、マーケットも激変していますね。拡大著しいフィンテック(FinTech)をはじめ、消費者金融の代替となるサービスが次々に生まれています。例えば後払い決済の「BNPL(バイ・ナウ・ペイ・レイター)」のほか、顧客基盤に強みを持つ大手ITプラットフォーマーもレンディング(貸付)事業を強化していますし、必要な時にお金を確保するという意味では、スキマバイトのマッチングサービスも広義の競合に該当するでしょう。
金利ある世界で競争が激化しているわけですから、従来通りのビジネスのままではお客さまのニーズにお応えできなくなるという危機感を強めています。

需要に変化はありますか。
お客さまの資金確保ニーズは高まっており、消費者金融の貸付残高を見るとコロナ禍以降、人口減少局面にもかかわらず上昇傾向が続いています。「レイク」は業界大手4社のうち4位に甘んじております。
しかし、業法規制の制約の下、サービスの独自性を打ち出すことは容易ではありません。似通った商品性であることから機能訴求が功を奏さず、消費者金融業界におけるマーケティングはこれまで「ブランド勝負」一辺倒でした。それも、サービスが必要な際にまず最初に思い浮かべていただける「第一想起」獲得こそが肝要です。貸金サービスの特性上、口コミが伝播しづらく比較検討の余地があまりないことも一因ですね。
ですから従来、各社とも広告活動に莫大なリソースを割いてきましたし、圧倒的な認知度を誇る業界トップの牙城を崩すのは至難でした。レイクブランドも50年の歴史を積み上げてきましたが、発想の転換なくしてブレークスルーはないと、新たなサービス開発に着手したのです。
異例のサービス実現を後押しした「顧客中心主義」
人生には様々な局面があり、お金を理由に諦めざるを得ない瞬間もあるかもしれません。常にお客さまの人生に寄り添い、夢の実現や課題解決の一助たるべくサービスをご提供する、いわゆる金融包摂を担うことが、我々の使命であると考えています。
消費者金融業界は厳しいご批判をいただいた時代もありますが、その後、企業努力や規制の厳格化により運営を刷新、コンプライアンスも徹底されています。現在貸出審査に厳しい基準を設けているのも、責任ある貸手たるべしとの一念からです。
また、2021年から当社はSBIグループ傘下に入ったのですが、SBIグループのもつ、「顧客中心主義の徹底」や「金融イノベーターたれ」という理念に大いに触発されました。かつてSBI証券は店頭メインだった証券業界にインターネット金融のパイオニアとして参入し、DXを徹底して各種手数料を無料にする「ゼロ革命」を起こすなど、お客さま還元を最大化してきたイノベーターです。レガシーな業界に風穴を開けてきた自負と強烈な覚悟がグループのDNAとして刻まれており、それがコモディティ化した消費者金融業界でブレークスルーを起こす追い風となりました。今回の新サービスも抽象化すれば、SBI証券の構造変革と似ていますね。
それが新たにリリースされた「365日間無利息」サービスですね。無利息期間の異例の長さに驚きました。
ゲームチェンジのための渾身の一手です。これまで無利息期間は業界水準で30日間、レイクでは60日間が最長でしたが、商品構造の徹底的な見直しにより365日間へと一足飛びの長期化を果たしました。1年あれば、その間利子を気にせず存分に夢の追求や課題解決に注力いただける。それこそが今お客さまに提供すべき価値だと考えたのです。
サービス実現のために構造改革も推し進めました。DXによって店舗運営費等の固定費を削減したほか、広告活動も効率を求め、少ない広告費で大きな効果を得られるように模索を続けています。従来多くのリソースを割いてきたこれらを徹底的に再編成し、ダイレクトにお客さまに還元することで、365日間無利息でもビジネスモデルとして成立させる仕組みを構築しました。
なお、DXありきの仕組みであること等から、ご契約は「Web申し込み」限定とし、他にもいくつかの条件を設定しています。
AIエージェントの時代も見据え戦略立案
「365日間無利息」サービスは、その革新性だけで十分注目を集められると判断しました。先述した通り、我々の業界では「機能訴求」の効果が薄く、大規模に広告を投下し第一想起を獲得するのが定石でした。しかし本サービスはセオリーとは真逆の発想で、より大胆な機能訴求により認知を取ることを狙っています。真に価値あるサービスなら、その存在そのものが広告の役割を果たしてくれるはずだからです。
仮に他社が追従しようにも、ビジネス構造を大きく変えるのに時間がかかりますし、このサービスを真っ先にローンチした意義は覆せません。なぜなら「一番最初」の革新的な変化こそ話題を呼び、ブランドイメージの強化に大きく貢献するからです。
それらも踏まえた機能訴求ということですね。
もうひとつ、今回振り切った挑戦をしたのは「AI社会」到来を見据えているからです。近い将来、人々が商品選択の際にネット検索を用いるのではなく、AIエージェントにアドバイスを求める世界が来るでしょう。その時AIはブランド認知が高い商品よりも、機能的に優れた商品を勧めると予測しています。今まさに各社のAIがデータを学習しているフェーズにあり、このタイミングで当社が機能優位性を持つサービスを展開する意義は大きい。数年後の未来を想定しての開発でもあったのです。
「365日間無利息」新サービスを糸口に、他にもお客さまにエンゲージメントを高めていただけるような施策を構想中です。今後も顧客中心主義を徹底的に貫き、生活者に寄り添うという視点から柔軟な金融サービスを提供していきたいと考えています。

Profile

和泉 隆則
執行役員
コミュニケーション本部 副本部長
マーケティング部 部長