運転資金は事業の立上げや継続に必要な資金!
内訳や種類、調達方法を分かりやすく解説

公開日:2022年8月30日

更新日:2024年5月23日

運転資金は事業の立上げや継続に必要な資金!内訳や種類、調達方法を分かりやすく解説

運転資金とは、事業を継続するために必要な資金のことです。事業を継続する場合だけでなく起業する場合にも、創業時に必要な資金とは別にある程度運転資金を用意しないと、事業を進めることができません。
この記事では運転資金にはどのような資金が含まれるのか具体的に解説します。また、調達する方法についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

運転資金とは事業存続に必要なお金のこと

運転資金とは、企業や個人事業主などが事業をおこなうために必要な資金のことをさします。
起業する際は創業資金に加え、数ヵ月分の運転資金、生活費なども用意しておいた方がよいでしょう。
また、起業後も運転資金が不足すると、事業を継続することができず、場合によっては廃業になりかねません。現在の事業に必要な資金だけでなく、今後数ヵ月分の運転資金を準備しておくことで、安定した経営を実現することができます。

運転資金は固定費と変動費に分けられる

運転資金は固定費と変動費に大別できます。固定費とは売上高の増減に関わらず一定でかかる費用のことで、変動費とは売上の増減によって変動する費用のことです。それぞれどのような費用が含まれるのか、詳しく見ていきましょう。

固定費

固定費とは、売上と連動しない費用です。月単位、年単位でおおよその金額が決まっているので予算を立てやすいという特徴があります。
たとえば、人件費や物件賃貸料などは、ほぼ毎月一定なので固定費に該当します。固定費は予算を立てやすいメリットがある半面、削減しづらいです。そのため、固定費の割合が大きい場合は、十分な売上が確保できないと事業継続が厳しくなるでしょう。

変動費

変動費とは、売上と連動して日々変動する費用のことです。月単位、年単位で予想することは難しいため、予算を立てにくいという特徴があります。
たとえば、仕入れ費用や荷造運賃などは、取引の状況によって変動するため変動費に該当します。変動費は予算を立てにくく、事業規模によって金額が変わる特性を持ちます。
そのため、運転資金の変動費の割合が大きい場合は、売上があがっても利益は大幅に増えませんが、売上が下がった場合は変動費として使用できる金額も減ることになるので、事業は比較的安定しやすいといえるでしょう。

資金の項目

資金の項目

運転資金には、さまざまな資金が含まれます。主に発生する費用の例は以下のとおりです。

分類 項目
人件費 給料、社会保険料、福利厚生費、通勤交通費など
事業所・店舗維持費 家賃、管理費・共益費、水道光熱費、修繕費、駐車場使用料、更新料など
仕入れ 商品仕入れ、材料費、加工費、外注費など
用品・備品費 事務用品費、消耗品費など
営業諸経費 通勤以外の交通費、運送費、通信費、会議費、接待交際費、広告宣伝費、販売促進費、各種リース料、教育・研修費、租税公課など
そのほか お借入れ金返済元金、お借入れ金支払利息、納税準備金など
出典:「起業マニュアル 運転資金の考え方」(独立行政法人中小企業基盤整備機構)、
「補助事業事務処理マニュアル」(経済産業省大臣官房会計課)を加工して作成

運転資金の4つの種類

運転資金は、目的によって主に次の4つの種類に分けられます。

  • 経常運転資金
  • 増加運転資金
  • 減少運転資金
  • 季節運転資金

それぞれの違いについて、分かりやすく解説します。

経常運転資金

現在の事業を維持・運営していくために、恒常的に必要となる資金を「経常運転資金」と呼びます。人件費や事業所の家賃、仕入れに対する支払いなど、固定費と変動費を合わせたすべての資金をさします。
「運転資金」といえば経常運転資金をさすことが一般的です。事業を滞りなく進めるためにも、経常運転資金を適切に準備しておきましょう。

増加運転資金

売上が増加し、企業が成長しているときに必要になる運転資金を「増加運転資金」と呼びます。事業規模の拡大にともない、仕入れなどの変動費が増加するだけでなく、社員が増えたりより大きな事務所に移転したりするため固定費も増加することになります。
企業が成長しているときに十分な増加運転資金を用意していないと、黒字なのに資金不足で倒産する「黒字倒産」になる可能性があります。事業を成長させるために、金融機関から融資を得るなどの資金調達が必要になる場合があります。

減少運転資金

事業不振になり、売上が減少しているときに必要な資金を「減少運転資金」と呼びます。一時的に売上が減っても、人件費や家賃などの固定費は基本的には変わりません。また、掛取引の場合、以前の仕入れ代金は買掛金となっているため、清算するための資金が必要になります。
減少運転資金が必要な状態が続くと、固定費がかさみ、運転資金が不足してさらなる経営不振に陥ります。売上を向上させる対策を練り、状況の改善が必要です。

季節運転資金

一時的に通常よりも多くの運転資金が必要となる場合の資金を「季節運転資金」と呼びます。たとえば、夏・冬などのボーナス月は、ほかの月と比べて人件費が増えます。
また、冬向けの商品を扱っていて夏場はあまり売れない事業、ビジネスマン向けのサービスで大型連休のある月は利用率が下がる事業などは、ほかの月よりも運転資金が減ります。反対に、お正月、クリスマスなどのイベント近辺の商品を扱っている場合は、仕入れ資金が通常月より増える時期があるでしょう。
決まった時期に運転資金が増加する、あるいは減少することがあらかじめ分かっているため、事前に資金計画を立てることができます。特に運転資金が増加するときは、前もって資金をプールし、売上増加のチャンスを逃さないようにしてください。

運転資金の計算方法

運転資金の計算方法

運転資金は、以下の計算式で求めます。

運転資金=売上債権+棚卸資産-仕入債務

売上債権とは、売上の対価として将来的に金銭を受け取る権利であり、売掛金ともいわれます。商品を取引先に売ったものの、代金を得ていないときには、売掛金が発生します。
また、棚卸資産とは、商品、半製品、原材料などの形で保管あるいは輸送している在庫のことです。在庫が多いときは仕入れを減らせるというメリットがありますが、資金の流れが滞ることもあります。
仕入債務とは、商品などを仕入れたときの未払金のことです。取引先から商品を買ったものの、代金を支払っていないときには買掛金が発生します。

運転資金を調達する方法

起業するときや事業を拡大する際などは、まとまった運転資金を準備しておくことが必要です。運転資金の調達方法をいくつか紹介します。

  • 銀行や信用金庫などの民間金融機関から融資を受ける
  • 日本政策金融公庫から融資を受ける
  • 自治体の制度融資を利用する
  • 投資や出資を受ける
  • クラウドファンディング
  • ビジネスローンを利用する

それぞれの資金調達方法の特徴やメリット、注意点について説明します。

銀行や信用金庫などの民間金融機関から融資を受ける

資金調達方法として、まず思いつくのが銀行や信用金庫などの民間金融機関からの融資ではないでしょうか。既に取引をしている金融機関があるなら、担当者に融資の相談をしてみてください。また、取引したことがない金融機関でも、次の流れで審査に通過すれば融資を受けられます。

  • 融資の申込み(窓口で相談。金融機関によってはWeb申込みも可能)
  • 審査
  • 審査に通過した場合は契約・お借入れ

銀行は株主の利益を優先する株式会社です。大企業だけでなく中小企業も、銀行から融資を受けられます。ただし、地方銀行は営業エリアが決まっているため、地域内の企業しか融資を受けられません。
また、信用金庫は地域の利用者・会員の相互扶助を目的とした金融機関です。地域の中小企業や個人が主な取引先となります。営業エリアが決まっているため、ほかの地域の企業・個人は原則として利用できません。

日本政策金融公庫から融資を受ける

日本政策金融公庫とは、民間金融機関の金融を補完することを目的とした公的金融機関です。国の政策に基づいて中小企業や小規模事業者に融資を実施し、事業資金調達や事業拡大をサポートします。
以下の流れで、日本政策金融公庫からの融資を受けます。

  • 日本政策金融公庫の窓口で相談
  • 決算書や納税証明書などの審査に必要な書類の提出
  • 審査
  • 審査に通過した場合は契約・お借入れ

自治体の制度融資を利用する

制度融資とは、各地域の信用保証協会の保証を受けることで、民間の金融機関から融資を受けやすくする制度です。保証料の一部を自治体が負担する場合もあります。
制度融資は、自治体によって申請方法や利用できる金融機関が異なります。各自治体の信用保証協会やホームページで確認してください。
ここまで解説してきたような融資の種類、審査のポイントについては、下記記事でも詳しく解説しています。

投資や出資を受ける

出資とは、将来的な利益を見込んで、株式などと引き換えに資金を提供することです。なお、出資や融資などの会社に対してお金を出す行為を「投資」と呼びます。
上場企業の場合、新規に株式を発行して、不特定多数の投資家から資金を募る方法が一般的です。いっぽう、非上場企業は株式市場で不特定多数の投資家から資金を募れないため、次の投資家から出資を受ける方法があります。

  • ベンチャーキャピタル
  • 個人投資家

いずれも、出資を受けたときは出資額に応じて株式を提供することが一般的です。株式は会社の経営権でもあります。大半を別の出資者に保有されると、その出資者の意向が経営に大きく影響する可能性があるため注意が必要です。

クラウドファンディング

クラウドファンディングは、インターネットを通じてプロジェクト単位で資金提供を募る仕組みです。新規事業を始めるときなどに利用されることがあります。
クラウドファンディングを利用すると、非上場企業や個人も不特定多数の投資家に出資を募ることができます。クラウドファンディングは、投資家に支払われるリターンによって、次の3つのタイプに分けられます。

  • 購入型:物品や権利
  • 金融型:株式や配当
  • 寄付型:リターンなし

ビジネスローンを利用する

ビジネスローンとは銀行や消費者金融などが扱っている事業資金専用のローンのことです。運転資金だけでなく創業資金や設備投資資金、買掛金の支払いなど幅広く利用することができます。
ビジネスローンのなかには、カードローンタイプのもの(事業者用カードローン)もあります。個人用のカードローンと同じく、審査によって利用限度額が定められ、限度額の範囲内で繰り返しお借入れすることが可能です。
法人向けの事業用カードローンは個人向けカードローンとは異なり、総量規制が適用されないため、年収の3分の1を超える金額を借りられることがあります。また、法人だけでなく個人事業主も利用できるカードローンもあります。
ビジネスローンの種類や即日融資を受けるためのポイントについて、下記記事でも詳しく解説しています。

事業者向けカードローンを利用する際の注意点

カードローンは早急に運転資金が必要になった際に頼りになりますが、利用にあたっての注意点があります。事業者向けのカードローンを利用する際の主な注意点は下記のとおりです。

  • 事業実態の確認がある
  • 実際に適用された金利や契約内容を確認する
  • 毎月の返済計画を立ててからお借入れする
  • 余裕がある場合は多めの金額を返済する

それぞれについて以下で詳しく紹介するので、カードローンの利用を検討する前の参考にしてください。

事業実態の確認がある

事業者向けの融資はほとんどの場合、申込みの際に事業実態の確認があります。具体的には、事業についての現状や収支、資金繰りの見通しなどを聞かれる場合があります。
また、確定申告書類や事業計画書などの事業関連書類も提出を求められる可能性があるので、申込む前にどのような書類が必要になるのか確認し、準備をしておきましょう。

実際に適用された金利や契約内容を確認する

カードローンでは利用可能額や適用金利が審査結果によって個別に決められます。
カードローンを計画的に利用するには、自身の契約内容を確認し、利用可能額や適用金利、そのほか毎月のご返済日やご返済額などをしっかりと把握しておくことが大事です。
カードローンの金利・利用限度額については下記記事でも詳しく解説しています。
金利の仕組みや計算方法についても分かりやすい内容になっておりますので、ぜひ参考にしてください。

毎月の返済計画を立ててからお借入れする

お借入れをおこなうと毎月のご返済が始まります。滞りなくご返済していくためには、毎月のご返済額を含めた資金管理が大切になります。
事前に毎月のご返済額を考慮した収支を計算しておくことで、どのくらいの金額であれば無理なくご返済ができるかが把握できるでしょう。
ご返済額やご返済日を考慮せず、無理なお借入れをしてしまうと収支のバランスが崩れてしまい、ご返済が滞ってしまう可能性もあるため十分な注意が必要です。
カードローンの返済方法や返済期日に遅れてしまった場合に生じる影響については、下記記事でも解説していますので参考にしてください。

余裕がある場合は多めの金額を返済する

基本的にご返済期間が長期化すればするほど支払う利息が増え、総支払額も多くなります。
そのため、返済計画を立てたうえで、資金に余裕があるときには多めにご返済し、早めの完済を心がけることが大切です。
レイクではWeb返済サービスや銀行振込みで一括返済ができます。また、毎月の最低ご返済額以上での追加のご返済もWeb返済サービス、銀行振込み、スマホATM取引、提携ATMにて可能です。
早めのご返済は総支払額を抑えることにつながるため、資金に余裕がある際にはご活用ください。

まとめ

運転資金は、事業を継続するために必要な資金です。事業の規模が大きくなった場合などには運転資金が増えるため、資金調達の必要性が生じることがあります。事前にどの程度の金額が必要か見積もり、計画的に準備するようにしてください。
急ぎのときにはビジネスローンの利用も検討してください。利用する際は無理のない返済計画を立ててから、ご利用ください。

監修者:内山 貴博

監修者:

内山 貴博

プロフィール:

1978年生まれ。証券会社の本社部門に勤務後、2006年に独立。金融リテラシーを高めることがFPの役割だと感じ、FP相談やセミナーなどの活動をおこなっている。また動画チャンネル「FPお金レッスン」では投資初心者向け、FP学習者向けのコンテンツを提供中。主な著書に「駆け出しFPの事件簿」(きんざい)、「お金の使い方テク」(朝日新聞出版)がある。

資格情報:

CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士