カードローンの利用は住宅ローンの審査に影響ある?
確認される点や準備すべきことは?

公開日:2022年7月26日

更新日:2024年1月23日

カードローンの利用は住宅ローンの審査に影響ある?確認される点や準備すべきことは?

カードローンの利用が、住宅ローンの審査に影響をおよぼすのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
お互いに影響をおよぼす可能性があるので、申込む前に理解しておくことをおすすめします。
この記事では、カードローンと住宅ローンの関係性をわかりやすく紹介します。
また、カードローンと住宅ローンの具体的な違いや、現在利用しているカードローンを住宅ローンにまとめられるのかも解説します。
これから住宅ローンを利用しようと考えている方は参考にしてください。

カードローンと住宅ローンの違い

カードローンと住宅ローンの大きな違いのひとつは、お借入れしたお金の使い道です。
カードローンの場合、基本的にお借入れしたお金の使い道は自由です。
事業性資金に利用できない場合がありますが、食費や娯楽費、引っ越しの資金など、基本的にはどのように使っても問題ありません。
一方で住宅ローンでは、お借入れしたお金の使い道が住宅購入に関する用途に限られます。
サービスやローンを提供する会社によって異なる場合がありますが、住宅の購入にともなう仲介料や各種保険料、設備費、家具やインテリアの購入が住宅ローンの使い道として認められるものの一例として挙げられます。

カードローンを利用すると住宅ローンの審査に影響がある場合も

カードローンを利用していると、住宅ローンの審査に影響があるという話を耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
結論からいうと、カードローンの利用が住宅ローンの審査に影響する場合があります。
どのようなケースで審査に影響するか、下記の3つを紹介します。

  • 現在滞納している、滞納したことがある
  • 複数のカードローンに申込んでいる
  • 過去利用していたカードローンを解約していない

以下で詳しく解説します。

現在滞納している、滞納したことがある

住宅ローンの明確な審査基準は公表されていませんが、審査の段階では「信用情報」を照会されます。
信用情報とは、クレジットやローンの契約や申込みに関する情報のことで、客観的な取引事実を登録した個人の情報です。
たとえば、現在契約しているカードローンの返済を滞納していた場合、あるいは過去に返済を滞納していた場合は、その事実も信用情報として登録されます。
もし住宅ローンの審査段階で現在もしくは過去の返済で滞納していたことが発覚すると、審査に通過しにくくなる可能性があります。
現在カードローンを契約しているのであれば、毎月支払いは期日を守り、滞りなくおこなうことが大切です。

複数のカードローンに申込んでいる

住宅ローンの審査では、高い確率で返済比率(返済負担率)が確認されます。
国土交通省住宅局の調査によると、令和4年度長期・固定金利の住宅ローン等に関する融資審査等の審査をおこなう際に考慮する項目では、93.0%の住宅ローンで返済比率(返済負担率)が確認されることがわかっています。

返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合のことを意味し、年間返済額÷年収で計算できます。
どのくらいの返済負担率であれば問題ないかは住宅ローンを提供している会社によって異なりますが、一般的には30~35%が基準といわれています。
たとえば、年収500万円の場合、年間返済額と月々のご返済額からシミュレーションしてみると、返済負担率は下記のとおりとなります。

返済負担率 年間返済額 月々のご返済額
(年間返済額÷12ヵ月)
30.0% 150万円 12万5,000円
35.0% 175万円 14万5,800円
40.0% 200万円 16万6,600円

複数のカードローンに申込んでおり、年収に占めるお借入れが多い場合には年間返済額も多くなり、返済負担率が高くなるため、住宅ローンの審査にも影響がでる可能性があります。
前述のとおり、住宅ローンの審査では返済負担率が確認される可能性が高いため、複数のカードローンを利用しているのであれば、過度なお借入れには注意してください。
また、カードローンの返済だけではなく、転職によって年収が減少するケースもあるため、住宅ローンの審査を受ける前に、できるだけ余裕をもった状態にしておくことをおすすめします。

過去利用していたカードローンを解約していない

カードローンは利用限度額の範囲なら、いつでも借りることができて便利です。しかし、過去利用していたカードローンを解約していない場合、利用限度額までならいつでも借りられる状態になります。利用していないカードローンがある場合は、早めに解約しておきましょう。
また、住宅ローンの審査の際に、現在のお借入れ状況を示す書類の提出が求められる可能性があります。カードローンを解約した際に解約証明書を受取っておくなら、ほかにお借入れがないことを示す書類として活用できます。

カードローンの利用は申告しなくてもバレる

住宅ローンを申込む際には、他社ローンの利用(お借入れ状況)を申告することが一般的です。
カードローンの利用が住宅ローンの審査に影響するのであれば、カードローンの利用を申告したくない方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、ローンの利用状況は信用情報機関に登録されているため、審査の段階で他社ローンを利用していることは明らかになります。
そのためカードローンを利用している場合は隠さず、申告しましょう。

住宅ローン審査で確認されるポイント

住宅ローン審査で確認されるポイント

住宅ローン審査で確認される項目は、各社によって異なる場合があります。
以下、令和4年度における国土交通省住宅局の民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書をもとに、住宅ローン審査についていくつかご紹介します。まず、審査では下記のような点が審査項目(融資をおこなう際に考慮する項目)になることがわかっています。

項目 融資を行う際の審査項目として考慮している機関の割合
(令和4年度調査)
完済時年齢 98.7%
健康状態 97.9%
借入れ時年齢 97.2%
担保評価 96.1%
勤続年数 93.2%
連帯保証 93.1%
返済負担率 93.0%
年収 92.9%
金融機関の営業エリア 90.7%
国籍 73.3%
融資可能額(融資率)購入の場合 71.7%
雇用形態 71.6%
融資可能額(融資率)借換えの場合 68.1%
カードローン等の他の債務の状況や返済履歴 65.1%
申込人との取引状況 48.0%
業種 34.4%
家族構成 29.8%
所有資産 26.2%
雇用先の規模 25.4%
性別 21.2%
その他 6.7%

上記のように、審査で考慮される項目はさまざまですが、大まかに分けると下記の3つのポイントに注目することが大切です。

  • 申込者の個人情報
  • 返済負担率
  • 信用情報

それぞれ詳しく紹介します。

申込者の個人情報

申込者の個人情報として、93%以上の高い確率で住宅ローン審査の対象となっているものは下記のとおりです。

項目 融資をおこなう際の審査項目として考慮採用している機関の割合
(令和4年度調査)
完済時年齢 98.7%
健康状態 97.9%
借入れ時年齢 97.2%
勤続年数 93.2%
年収 92.9%

上記以外では、雇用形態が71.6%と、高い確率で確認されることもわかっています。
このような申込者の個人情報から返済能力を判断し、住宅ローンの融資ができるか判断していることがわかります。
たとえば、一般的に契約社員より正社員のほうが収入が安定していると判断され、「返済能力がある」評価になっている可能性があります。
また、ひとつの会社に長く勤めているほうが収入の安定性が高いと判断され、評価される可能性は高いでしょう。以上が、申込者の個人情報は審査において重要なポイントとなります。

返済負担率

返済負担率は、93.0%の金融機関で確認されています。基準は金融機関によって異なりますが、高すぎると判断されると審査に不利になると考えられます。
住宅ローンに申込む前に、毎月無理なく返済できる金額をベースに返済負担率を計算してみましょう。40.0%を超える場合は毎月のご返済額を下げることも必要です。
ただし、毎月のご返済額を下げすぎると、返済期間が長引き、利息が高額になる可能性があります。お借入れ額を減らす、住宅の予算を下げるなどの変更も必要になるかもしれません。

信用情報

個人情報や返済負担率のほかには「カードローン等の他の債務の状況や返済履歴」といった信用情報が65.1%の住宅ローンの融資をおこなう際の審査項目として確認されることがわかっています。
明確な審査基準は各社異なるため一概にはいえませんが、信用情報が審査に影響を与えてしまう可能性は考えられます。

住宅ローンの審査前に準備しておくべきこと

住宅ローンの審査に申込む場合は、住宅や収入などを示す多数の書類が必要になるだけでなく、記入項目の多い申込書を作成する必要もあり、かなり手間がかかります。一度の申込みで審査に通過するためにも、次の準備をしておきましょう。

  • お借入れ状況を把握する
  • 返済負担率を試算する
  • 解約証明書を取得しておく

それぞれの準備について解説します。

お借入れ状況を把握する

新たに申込む住宅ローン以外にお借入れがある場合は、すべてリストアップしておきましょう。各お借入れの毎月のご返済額とご利用残高も正確に調べておくとよいです。
お借入れが多く、毎月のご返済額も多い場合は、返済負担率が高くなるため、住宅ローンで借りられる金額が少なくなる可能性があります。また、場合によっては住宅ローンの審査通過が厳しくなることもあるため、返済できそうなローンは早めに完済しておきましょう。

返済負担率を試算する

住宅ローンを提供している金融機関のホームページでは、借りたい金額から返済プランをシミュレーションする機能があります。活用して年間返済額を求め、年収で割って返済負担率を計算してみましょう。
返済負担率が高すぎると、審査通過に影響を与えることがあります。できれば40%を超えないように調整してみましょう。なお、利用中のローンがある場合は、すべてのローンの年間返済額も合算して返済負担率を計算します。

解約証明書を取得しておく

利用していないカードローンがある場合は、解約して解約証明書を取得しておきましょう。また、ご利用残高が少額のみ残っているローンがある場合は、できれば早めに完済して解約し、解約証明書を取得しておくことをおすすめします。
住宅ローンの審査で、お借入れ状況がわかる書類の提出を求められることがあります。カードローンの利用について尋ねられた際は、解約証明書を提出し、すぐにほかのカードローンでお金を借りられる状況にないことを示すとよいでしょう。

住宅ローンの審査に通らなかった場合の対処法

準備をして住宅ローンに申込んでも、必ずしも審査に通過するとは限りません。審査に通過しなかった場合は、次の対処法を検討してみてください。

  • お借入れ希望額を下げる
  • 毎月のご返済額を減らす
  • 他社に申込む

それぞれの方法を見ていきましょう。

お借入れ希望額を下げる

お借入れ希望額を下げることで、返済負担率が下がり、審査に通過しやすい状況になることもあります。頭金を増やしてお借入れ額を下げられないか、検討してみましょう。
ただし、自己資金が少ない場合は、お借入れ希望額を減らすと建物や土地にかけられる資金も減らすことになってしまいます。家族で話し合い、マイホーム計画を見直すことも考えましょう。

毎月のご返済額を減らす

返済負担率が高すぎて審査通過が難しくなっている場合は、毎月のご返済額やボーナス時のご返済額を減らすとよいでしょう。
ただし、年間返済額が減ると返済負担率を下げられますが、返済期間が長引き、総返済額が高額になる可能性があります。また、返済期間が長引くことで、完済時年齢が高くなります。住宅ローンは多くの金融機関では80歳前後を完済時年齢の上限としています。
さらに、令和4年度における国土交通省住宅局の民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告では、98.7%の金融機関が「完済時年齢」を重視すると回答していることから、審査に不利になる可能性があるため、注意が必要です。

他社に申込む

審査基準は金融機関によって異なります。別の金融機関ならば、同じお借入れ条件でも審査に通過するかもしれません。金利などの貸付条件を確認したうえで、他社の住宅ローンに申込んでみましょう。
ただし、手あたり次第、多くの金融機関に申込むのはおすすめできません。信用情報機関ではローンの申込状況も一定期間保管するため、慎重に申込先を選び、厳選した数社にのみお申込みください。

カードローンと住宅ローンをまとめることは可能?

カードローンを利用している方のなかには、カードローンと住宅ローンを一本にまとめてご返済額や返済総額を抑えたいと考えている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、住宅ローンは原則としてそのほかのローンとまとめることは難しいです。
ただし、金融機関によっては「住宅ローン資金の50.0%以内」や「500万円以下」という条件付きで無担保ローンなど、住宅ローン以外のお借入れをまとめられるサービスを提供している場合があります。
詳しい条件や、利用可能かどうかはサービスを提供している会社に問合せてみるとよいでしょう。
また、ローンを一本にまとめることで返済総額が抑えられるかどうかは、適用される金利などによっても異なるため、事前に確認しておくことが大切です。

まとめ

カードローンの利用状況やご返済状況は住宅ローン審査に影響をおよぼす可能性があるため、現在契約しているカードローンがあるのならば毎月滞りなく返済をすることが大切です。
また、多くの住宅ローン審査では返済比率(返済負担率)も審査項目として確認される可能性があります。お借入れしているカードローンがあれば完済を、使っていないカードローンがある場合は事前に解約しておくことをおすすめします。
紹介した住宅ローン審査で確認される可能性がある項目を意識しつつ、マイナスな影響がないかを確認しましょう。

監修者:内山 貴博

監修者:

内山 貴博

プロフィール:

1978年生まれ。証券会社の本社部門に勤務後、2006年に独立。金融リテラシーを高めることがFPの役割だと感じ、FP相談やセミナーなどの活動を行っている。また動画チャンネル「FPお金レッスン」では投資初心者向け、FP学習者向けのコンテンツを提供中。主な著書に「駆け出しFPの事件簿」(きんざい)、「お金の使い方テク」(朝日新聞出版)がある。

資格情報:

CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士